海辺のコテージにいる。
窓から眼下に見える荒れ狂った海・・・
ボスポラス海峡だ。
なぜだかそう思う。
狭いボスポラス海峡は、波頭の彼方にイスタンブールの街並みが見える。
ボクは、その旧都コンスタンチノーブルまで行かなければならない。
それが、ボクに与えられたミッションだから・・・
ボクの傍らには、3人の男女・・・
何処かで見た顔だけれど、名前までは分からない。
シークレットエージェントらしい。
3人はボクを見送ると言っている。
見送りではなく、監視ではないか・・・
ボクはそう判断している。
火山弾のようにゴツゴツした岩場を降りて、海に向かって行く。
そこは小さな港になっていた。
船が一艘停泊できるかどうか、なのだ。
荒れ狂った海峡に、すでに先行の2人の男が泳いでいた。
しかし、イスタンブールに辿り着くことなく、次々と沈んで行った。
3人のエージェントは無言でボクを見つめている。
ボクは飛び込む決心をした。
が、その時、気がついた。
尻のポケットにスマホが入っている。
左のポッケにゃお札が入っている。
右のポッケにゃ名刺やカードが・・・
濡れちゃうな・・・
その時だった。
港に荒波を割って、小さな漁船が入って来た。
見ると、船頭は松五郎だった。
ボクのタイ釣りの師匠、漁師の松五郎だった。
ボクは、躊躇せず松五郎の船に飛び乗った。
そして、ボスポラス海峡の怒涛の中に突撃していった。
顔にぶち当たる波しぶきが、しょっぱくて気持ちいい・・・
松五郎は、いつものように乃木大将のような顔で舵を握っている。
「楽しいなぁ、松五郎!」
ボクは大声で叫んだ。
(イスタンブールへ行かなければならないミッションは何だったのかは不明(笑)
でも、最後の最後に松五郎が救出に来てくれた。松五郎は那古船形のタイ釣り漁師でボクの師匠。20年前に他界している・・・。松五郎に会えるなんて、夢はなんて素敵なボクだけの世界なんだろう!)