冬の小さな青白い月が川面に映っている。
それは、せせらぎの中で時に歪み、時に散りじりに光を放つ。
川風がそっと身体をかすめて行く。
一竿の風月
ボクは釣り竿を今宵の友とし・・・
この大自然の中で、俗事から解き放たれている。
雁が三羽、鳴きながら月光をよぎる。
沈思の自由
今、ボクには何の言葉もいらない。
先刻から待ちうけていた言葉たちが、喉元で消えた。
かけるべき相手もいない。
戸惑う唇もない。
饒舌な眼もない。
胸の彼方の思い出さえも仕舞っておこう。
物質の豊かさこそ、精神の崩壊・・・
そんな木の芽時の想いには、まだ季が早い。
日暮れて途に窮することもあるまい。
気がつくと、風が止まっている。
川面に月がまるまると映っている。
もうしばらくは、洗心の刻を楽しんでいよう。
(目覚めると、外はドーンパープルの夜明けだった。美しい。寝る前に持っていた、幾つかの懸案事項などどうでも良くなっていた。ケセラセラ・・・♪
夢が人生の些事を洗い流してくれていたのだった。)