珍しくBarのカウンターで酒を飲んでいる。
ハイボールにはニッカがいい。
ハイボールには安い酒が似合うんだ。
だから、バーボンもいいな。
酒を無二の友としていた頃・・・
物事の限界を知らないボクは、好きなだけ飲んでいたっけ。
酒とは、飲んでいる時は飲み足らず・・・
飲み終わった時は、すでに飲みすぎている飲料のことだ。
そんな酒の定義を、想い浮かべた時に、ボクは酒をやめた。
ボクは、酒飲みになってはいけない種類の人間なんだ。
ひかえ目にしよう・・・
ついでだから、70本も吸っていた煙草も止めた。
競馬や麻雀などの賭け事もやめた。
それで、人生何が面白いと友たちが言った。
しかし、身体に悪いものを全てやめたら・・・
あの日から、何事もひかえ目になったかと言うと、とんでもなかった。
興味や好奇心が、ますますアグレッシブになって人生の面白さが一変した。
世の中が楽しくて仕方がない。
ボクは、手にしたグラスのハイボールを、床に振りまいた。
お前の誘いには乗るもんか・・・
アッカンベー!
(あの日から、時々酒を飲みそうになる夢を見る。最初の一口はすごく旨い。
でも、いつも気がついて捨て去る。煙草の夢は見たことがない。酒と煙草のない人生・・・ちょっとだけひかえ目なこの人生が気にいっている。)