深い悲しみに遭遇してしまった…ようだ
深い霧に閉ざされた森を抜けると古びた西洋風の館
重そうな扉を開けると、ボクより先に霧が流れ込んだ
霧にまかれた広間に画家がいる
全裸のモデルが二人…
1人は椅子に座り、1人はベッドに横臥している
ボクはふと感じた
3人の視線には、何の有機的なつながりを持たない
3人のエロスがまったく触れ合っていない
まるでホセ・マニエルの描くシュールな絵のように…
シュールな場面にさえエロスの触れ合いがない時代
エロスの触れ合いとは、恋だ
エロスの触れ合いが困難な時代
人間が恋を忘れた時代
単なるセックスの氾濫は、決してエロスの開放ではない
人間性の復活など無理だ
恋のないセックスばかりが世間に溢れかえっている
人間本来のエロスが孤立している
この時代の悲しみの元凶はここにある
この悲しみを癒してくれるのは…過ぎゆく時間のみ…
たったひとりだけの…恋を忘れた自分たち…
(安易な愛情表現や行動ばかりが目立つ時代。マスコミも人間関係の原因と結果ばかりに興味があるようだ。陳腐な優しさや、わざとらしいいたわりなど恋ではない。本当の恋はじっと手を握りしめていればいい。そこに美しく甘美なエロスが生れる)