郊外らしき住宅街を自転車で走っている。
突然、目の前に急坂が現れた。
ボクは躊躇することなく、坂道を疾走する、まるで何かを振り払うように・・・。
いつの間にか、ボクの乗り物はスケボーになっていて、更に小さなコブをジャンプすると、列車の座席に座っていた。
流線形の湘南電車…ボクが小学生の頃、東海道本線を走っていたやつだ。
最新型だ。
窓の枠は木で出来ていて、ガラスの窓は三段になって上に開く。
大人の呑む煙草の匂いが、窓枠や座席に沁みついていて、それは刺激的な別の空間だった。
乗客のため息でコーヒー色にくすんだ車内、懐かしい。
そう、乗客たちはみんな、物憂げな顔を創って、外を見ている。
終着駅で待っている何かに、わずかな期待をしているのだろう。
ところで、ボクは今、何処へ向かっているのだろうか。
ボクも現実の世界から逃避して、愛の世界へ向かっているのだ。
現実と愛は、別世界なのだから・・・。
ひとつの空間と、別の空間を結ぶ架け橋・・・
そこに七色の虹を架ける人もいるし、グランブルーの海へダイビングする人もいる。
現実の世界から、愛の世界へ行くには、決心と勇気が必要なのだ。
そんなことを、自分に言い聞かせながら、ボクは汽車に乗っているんだ・・・
と、思ったら・・
なぜだかボクは、鵠沼海岸の砂山に大の字で寝ている。
ボクはいったい誰に会いにいったのだろう・・・
そんなことを思っていたら、覚醒してしまった。
(懐かしい・・流線形の東海道本線にもっと乗っていたかったな。確かに子供の頃の汽車は、別世界への橋渡し・・・虹の架け橋のようだった。大人になっても現実世界から別の空間へ行けるかけ橋は持っていたいな・・・そう思う。)