ボクの頭の上には、鳥の巣が乗っている。
見方によっては、空気清浄機の丸いフィルターにも見える。
ボクのヘアースタイリストである中山先生がデザインしたものだ。
結構、アバンギャルドで気にいっている。
それに、この部屋の壁や床は、びっしり柔らかな産毛が生えているようだ。
ここは、どこだろう?
その時、ボクの目の前に大きな鷹が現れたのだ。
鳥小屋か・・・ここは・・・
鷹がゆっくり、しかしきっぱりと話し始めた。
「私は今、40歳になった。」
「私たちの寿命は70年・・・しかし、この40年目に大きな決断をしなければならない」
「それは、死ぬか、孤独の旅にでるか・・・」
「私たち鷹は、40年生きるとクチバシが伸びすぎて餌が食べにくくなる」
「脚の爪も伸びすぎて、餌を掴めなくなる」
「毛も若さがなくなって、重たくて空を飛びにくくなる」
「だから、このまま死を迎える仲間も多いのだ」
「でも、まだ生きる気があるなら、寿命はあと30年あるんだよ」
「ただ、ひとつの決断をしなければならない」
「それは・・・」
「それは、家族、仲間と別れ、独りで深い森を越えて高い山の岩場に行かなければならないのだ」
「そこで、誰の世話にもならず、伸びた脚の爪を、ひとつ残らず抜いてしまう」
「次に、羽根を一本ずつ抜いて軽くする」
「最後に、岩にクチバシを叩きつけて、折ってしまうのだ」
「そうして、何も食わず、何も望まず、何日も何日もじっとしている」
「敵に襲われたり、病気になったら終わりとあきらめる」
「そして、新しいクチバシが生え、新しい爪が伸び、新しい羽根に生え換わった時、
新しい命が復活する」
「これから30年、あたらしい生活が始まるのだ」
「じゃ、そろそろ山へ行くかな・・・」
その鷹は、重たそうに羽ばたいて、孤高の彼方へ飛んで行った。
ボクも今、新しい人生の第二章を迎えている。
第一章に負けずとも劣らない、素敵な人生にしよう!
やるぞー!
するぞー!
おきろー!
本当に起きちゃった。
頭の毛は、少しパーマが解けてきたが、昨夜のままだった。
(何かの本で、鷹は長生きの鳥で70年も生きるとあった。だだし、そこまで生きる為には40年目に勇気のいる決断と厳しい試練があるそうだ。人間も60年目がその決断と試練の時だろうね。ボクは今、第二の人生を送っている。青春時代よりも遥かに楽しいな。)