地下鉄の日比谷線だと思って乗った。
乗った駅は、左側のドアーが開いた。
次の駅では右側が開いた。
ボクは六本木と神谷町だと思っていたが、どうやら違うようなのだ。
真っ暗な洞窟を疾走する電車は、なんだ・・・
いつまでも、この二つの駅の間を轟音を轟かせて行きつ戻りつしている。
ひとつの駅のホームから、疲れ切った娼婦が乗り込んできた。
ホームのベンチには、酔っ払いの中年男が寝ている。
何だか死んだ街のような匂いがした。
駅名を見ると「絶望坂」と書いてある。
何だか分からないけれど、生きるには辛そうな人々が、乗り込んで来た。
誰も、この街にはもう戻らないつもりなのだろう。
電車のシートに身を沈めて、みんな眼を閉じている。
次の駅に向かう電車は、恋人の心から遠ざかるようなスピードで走っている。
娼婦の瞳に永遠の光が宿り始めた。
「アタシはナイフ・・・」
娼婦が呟いた。
「アタシは「真実」を突き付けるナイフ・・・」
「恋人でも、友達でも、付き合いが深まると、このナイフを抜いてしまう・・・」
「相手に嘘が見えてしまうと、いつも・・・」
「でも、アタシはナイフを捨てることができない・・・」
「捨てたら・・・アタシがアタシでなくなっちゃうからさ・・・」
ボクは娼婦を見つめる。
心に孤独を抱きしめ、苦しみもがく女の姿が、時にいじらしく見えてしまう危険。
こうして、優しさと言う名のサヤを隠し持った男が、時に地獄に堕ちて行く。
二つ目の駅名は・・・「欲望町」
(眼が覚めて、ブラボーな気分。つまらない二つの駅を巡っているうちにストーリーが展開し始めた時は、夢の中で「やったね」な気分になりました。今日は創作の日かな。書きかけの小説を書くとしよう・・・)