ゆえあってヒロに追われている。
ヒロはアメリカ育ちのニューハーフなのだ。
ボクは、ニューヨークの42番街を歩いていた。
対向してきた車を運転しているのは、ヒロだった。
ヒロの鋭い視線がボクを射ぬく。
何かを察知したボクは、そっと、横道に逃げ込む。
この辺りは、非常に治安の悪い場所だ。
ビルの陰から、幾つもの豹のような眼光がボクに迫って来る。
ボクは逃げる。
懸命に逃げる。
振り返ると、ヒロのワゴン車が追って来る。
ボクはブルックリンの橋を渡り、ニュージャージーに逃げ込む。
ヒロのワゴン車が、ボクの後を追ってきている。
その時、ボクの横を追い越して走る男が・・・
何処かで見たことがある奴だぞ。
思い出した。
デビット・ジャンセンじゃないか・・・
本物の「逃亡者」だ。
彼はまだ、逃げているのか!
彼が逃げる姿をテレビで観たのは、確か1964年だ。
この年に、ボクは放送界に入り込んだので、良く覚えている。
ボクは彼の後ろについて逃げることにした。
草原に入り込んだと思ったら、そこはゴルフ場だった。
やたら、ゴルフボールが飛んでくる。
デビットとボクは、それをヒョイヒョイかわしながら逃げまくる。
ボクたちは大笑いしながら、逃げ続ける。
逃亡者って、こんなに楽しいものなんだ。
Viva! Runaway!
洞窟があったので、そこに逃げ込んだ。
真っ暗闇だ。
やがて、光が見えてきて、洞窟の出口があった。
ボクはそこから飛び出した。
ここは何処だ?
分かったぞ。
なんだか、これも映画で見覚えがある。
ここは伊豆半島の天城山中の隧道だ。
伊豆の踊り子が歩いた道じゃないか・・・
ふーぅ、助かった。
ボクは安堵した。
デビットはいなかった。
彼はまだ、何処かで逃げているのだろうか・・・。
(逃亡者Runaway・・・ボクが大学生の頃のテレビ映画だ。デビット・ジャンセン演じるリチャード・キンブルが毎週アメリカ中を逃げ回る物語だ。彼と一緒に逃げられるなんて最高に楽しい夢だったな(笑))