ボクの故郷の海に来ている。
弓のように美しいラインを描く砂浜には誰もいない。
ボクは真冬の朝日に煌めく、この鵠沼の海が好きだ。
左手には、雑踏から解放された江の島が、のんびりと浮かんでいる。
右手には、烏帽子岩から小田原、熱海、伊東、稲取・・・
箱根山から天城連山・・・
その頂点に、綿の帽子をかぶった富士山がほほ笑んでいる。
これが、ボクの子供時代からの世界・・
ボクだけの宇宙・・・
耳を澄ませば、海は全てを語りかけてくれる・・・
鎮まった凪の海からの、誘いのような小波が砂浜を潤している。
すーっとやって来ては、すーっと返す波・・・
ひたひたひた・・・
ザァー・・・
耳を澄ませば、海の中から様々な音がもっと聞こえる・・・
じゅくじゅくじゅく・・・
ヒメアサリが砂の中から、息を吐いている。
ピチュピチュピチュ・・・
シオマネキ蟹が、あわてて砂に潜りこむ・・・
ピピピピピピ・・・
無数のウミムシが泳ぎ回っている・・・
1メートル四方の波打ち際にも、数百の生きものたちがいる。
邪魔をしないように、そーっと水に入ると、彼らに会える。
そして、ボクも彼らと共に、この地球に生きていることを実感する。
自然は、ロングショットで見るよりも、ズームアップで見つめるといい・・・
(今年、故郷の海の夢を何回見ただろう? 夢だけでなく、実際にも10回以上は行ったな。あの海はボクの原点だから・・・人生で立ち止まった時は、ボクを育ててくれたあの海に行く。これがボクの自然回帰なんだ。)