寒風が吹く、黄昏時の小川・・・
その流れを、じっと見つめて佇む男ひとり・・・
鴨 長明・・・
そんな訳がない。
それは少年であった。
行く川の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず
淀みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、
久しくとどまりたるためしなし。
小さな川と言えども、常に流れている。
いつの世も、時代は留まる事がない。
時間は止まらない。
例え小さな川でも、留まることはないのだ。
少年は、その流れを自分の人生に置き換えているのだろう。
自分の行く先を探し求めているのだろう。
益々、行く先の見えない時代・・・
少年は戸惑っている。
いったい自分は何処に流れて行くのだろう・・・
どんな岸辺に流れ着くのだろう・・・
ネットで何でも見える時代なのに・・・
なんで、自分の行く先は見えないのだろう・・・
少年は大きな壁に行く先を遮られている。
ボクは、少年に声をかけた。
見えなくて当たり前だよ。
ネットで見えるのは、バーチャルな世界・・・
君自身の世界はリアルなのだから・・・
君は君が主人公のドラマの主役・・・
ストーリーは毎日アップデートされていく。
先の事など分からない。
だから面白い。
ストーリーが最後まで読めてしまうドラマなんて愚作。
この先、奇想天外なシーンを期待して、歩いていけばいいさ。
少年は、ゆっくりと踵を返して歩き始めた。
(先行きが不透明な時代。先の見えない迷える若者たち・・・。そんな文字がメディアに溢れている。それを助長する芯のない評論家と言う名の大人たち・・・。
人生に先行きなど見えたら、これほど詰まらないことはない。時代が益々、不透明だからこそ人生は面白いのだ。ボクはそう思う。)