日本家屋の小さな寝間…
仄かに小さく揺れる灯りの中に
角袖を腕組みをした男が座っている
床の中では、仰向きに寝た女が
静かな声でもう死にますと言う
女は長い髪を枕に敷いて
輪郭の柔らかなうりざね顔を
その中に横たえている
この光景をボクがモニターで見つめている
角袖の男は何処かで見たな…
そうだ、写真で見た事のある男
なんだ、夏目漱石だよ
このモニターの絵はそうか…
こんな夢を見た…で始まる漱石の「夢十夜」の冒頭のシーンだ
そうか、これは小説だからモニターのシーンはボクの想像なんだな
文章からの写生だから、誰もが同じようには見えないだろうけれど…
ものがどう見えるかは
その人がどう見ているかで決まる
つまり感性の領域なんだな
ただリアルに見つめる人もいれば
詩的な想像力で見事なシーンを構成する人もいるだろう
そんな素敵な想像力をボクは、まなざしと言う
ボクは何を見て、如何に書くときも
この自分の、まなざしを大切にしている
なんだか、夢一夜の中で独り合点しているボクであった
(今週のボクは、物書きに集中しているので、夏目漱石まで登場しちゃったよ(笑)
でも夢十夜に登場した男の角袖や部屋のレイアウトは、まったくボクの想像だ。
文章って読む人によって、浮かぶシーンが全て違って来る…これって面白いね。
そこまで計算してる作家はいるんだろうか…)