「エイジ!もっと弾けろ!君なら出来る!」
「ユウナ!それだそれ、ランウエイの先でピストル構えたら、可愛いウインク入れよう」
「オゥ!サチコ、そのステップ最高!それで決めてこい」
ここは、サニーホールの舞台裏・・・
美翔祭・トータルヘアーショーの本番前だ。
バックステージには、出番待ちの高揚したモデルたち・・・
「ハルカの身体の中には、妖艶な女がいるんだなぁ、女性はマモノだ」
そう、まだ高校生のハルカが、吉原の花魁衣装とメイクをしている。
この妖艶な雰囲気は、ボクが演出を付けただけでは出て来ない。
ハルカの身体の中に、既にもう一人の女が住みついているのだ。
その自堕落な歩き方・・・
男の心を居抜く眼力・・・
更に凄いのは、後姿の妖艶さだ。
2回目のステージでも、この後姿にお客の視線を集中させてしまった。
普段のハルカは、大人しい女子高生なのだ。
それが、この変わりようといったら・・・
将にメイクアップの力である。
メイクアップは、単に装うだけでなく、心の有り様まで変えてしまうのだ。
このトータルヘアーショーの見せ場は、この一点にある。
約百名のモデルが、全員、もう一人の自分になり切ってステージを飾るのだ。
「さぁ、みんな、本番いくぞ!スタンバイだ!」
モデルの皆が、指でLOVEマークを作って、ボクを見つめる。
「Diversity・・・」
さて・・・
あれ?
昨日確か・・・
フィナーレやったよな・・・
これは・・・
夢か・・・
夢だ!
うたかたの夢だった。
見果てぬ夢なら、もっと見ていたいのに・・・
(二日間、6公演のトータルヘアーショーが昨日終わった。上手く出来た舞台は、終わるのが惜しい。そんな想いが夢になった。ボクも単純と言えば単純なんだなぁ。
でも、今回はYoutubeにアップしたいほど、素敵な作品になったのだ。)