ボクは松林の中に居る。
想い出した・・・
ここは、ボクの遊び場だった松林だ。
10メートルに満たない松の木が数百本・・・
あると、思っていたけれど50本ほどかな・・・
この松林の中で、戦争ごっこをやったなぁ。
武器はニセアカシアの枝を削って作った刀と・・・
ヤツデの実を弾にしたゴムパチンコと・・・
手榴弾代わりの松ぼっくりだ。
そうだ、この先の梨の木の根元に、ボクの武器庫があるんだ。
近くには、落とし穴があるから気をつけて歩かないと・・・
でも、梨の木は見つからない。
ボクは松の木に登った。
戦争ごっこでは、松の木の上が、敵から隠れる重要な場所なのだ。
樹上に隠れていて、敵が来たらパチンコを撃つ。
敵の中には、弓矢を持った奴もいるので、気をつけなくてはだめなんだ。
もし、敵に見つかったら、松の木の枝から枝へ逃げ回る。
猿のように、木から木へ渡っていくのだ。
掴んだ枝を大きく振って、隣の木へ飛び移るのは面白い。
でも、今のボクには出来そうもない。
子供の頃は出来たのに・・・
しかし、今日の松林には友がいない。
その時だった・・・
「これ、誰かにタカランチョ?」
作ったばかりの、弓矢を持った少年が現れた。
「これ、タカランチョ?」
「アンチョ!」
ボクは、思わず叫んだ。
少年は、ボクに弓矢をくれた。
ボクは、少年にあげるものがない。
ポケットの中を探していると、少年が言った。
「エンガチョ!」
そう言って、少年は踵を返すと駈け出して行った。
その後ろ姿は、少年時代のボクだった。
(すばらしい夢を見た。ボクの子供の頃の遊び場・・・。今、あの松林は全て住宅地になってしまった。でも、タカランチョ、アンチョ、エンガチョ・・・ボクたちの言葉は、まだボクの中で生きているのだ。)